個人型確定拠出年金iDeCoとは?メリット・デメリットや節税効果をわかりやすく解説

個人型確定拠出年金iDeCo(イデコ)とは、つみたてNISAを合わせておすすめされている、初心者向けの資産運用商品です。

60歳まで運用益を非課税で積み立てることができ、毎年積み立てた金額は全額所得から控除されるため、税制面でかなりお得に資産運用することができます。

また、60歳になって払い込みが終わり、給付を受け取る際も税制面で優遇されるなど、つみたてNISAよりも税効果が高い設計となっています。

ですが、同時に加入することのデメリットもあるので、ここではiDeCoのメリットとデメリット、申し込みから受け取りまでの流れす順番に紹介します。

目次

iDeCoのメリットは?節税効果が最大の魅力

初心者の方でも始めやすい資産運用消費として人気のiDeCoですが、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか?

ここではiDeCoをすることによるメリットを紹介していきます。

掛け金が所得税控除の対象になる

iDeCoの最大のメリットは、掛け金が全て所得控除の対象となる点です。

例えば、企業年金のない会社に勤めている方の場合、月間23,000円まで掛け金を設定でき、年間276,000円つみたてできます。

年間276,000円が所得から控除されるため、その分所得税・住民税が安くなって手取り収入が増えます。増えた手取り収入をつみたてNISAなどのつみたて投資に回すことでさらに効率よく資産運用ができるようになるのが大きなメリットです。

運用益が非課税になる

iDeCoで運用した投資信託などで出た利益は全て非課税になります。

しかも非課税期間60歳までと長く、早くつみたてを始めることで、長期間非課税の恩恵を受けることができるので、できるだけ早く始めることをおすすめします。

受け取り時も税制優遇がある

掛け金の所得控除、運用益の非課税以外にも、受け取り時に税制優遇を受けることができます。

受け取り方が選べますが、どの受け取り方でもそのまま利益として課税される訳ではなく、税制優遇を受けることができるので、様々な税効果を得ることができるようになっています。

受け取り方法については下記で詳しく紹介します。

iDeCoのデメリットは?原則60歳まで引き出せないので注意

iDeCoには税制面で大きなメリットもありますが、運用するにあたってのデメリットもあります。

デメリットを把握していないと、思わぬところで損をしてしまう可能性もあるので、メリットだけでなくデメリットもきちんと把握したうえで、iDeCo口座を開設するかどうか判断しましょう。

原則60歳まで引き出すことができない

iDeCoの最大のデメリットは、原則60歳まではお金を引き出すことができないという点です。

定期預金やつみたてNISAなどは、急な出費があった際にお金を自由に引き出すことができますが、iDeCoの場合は、加入してつみたてしたお金は60歳まで原則引き出すことはできません。

途中解約は難しく、掛け金を変更したり、払い込みを一時停止するといった対応になります。

その場合でも今までつみたてた元本は返って来ず、そのまま60歳まで運用されるので、急な出費のために貯金など自由に動かせるお金を分けておく必要があります。

加入時や運用期間中に手数料がかかる

iDeCoは加入時と運用期間中に手数料が発生します。

加入時には「国民年金基金連合会」に2,829円がかかります。

運用期間中は、収納手数料として「国民年金基金連合会」に1回の拠出ごとに105円、事務委託手数料として事務委託先金融機関に月額66円。

さらに管理する金融機関によっては、運営管理手数料が0円から月数百円ほどかかります。

運営管理手数料は、ネット証券などの一部金融機関では無料なので、できるだけ無料の金融機関を選ぶようにしましょう。

長期投資で毎月の手数料が発生するのは、少額としても積み重なると大きく変わってきます。

職業によって拠出限度額が異なる

iDeCoに加入した時、職業によって掛け金の限度額が異なるため、自分の場合は年いくらまで拠出できるかを把握しておきましょう。

iDeCoの加入年齢は60歳までとなっているので、60歳以上の方は加入することはできません。

また、海外移住者や、国民年金保険を免除、納付猶予している方も加入は制限されています。

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職業掛け金
自営業者・フリーランス月額68,000円(年額816,000円)
※国民年金基金、国民年金付加保険料との合算
会社に企業年金がない会社員月額23,000円(年額276,000円)
企業型DCに加入している会社員月額20,000円(年額240,000円)
DB(確定給付付企業年金)のみ加入している社員月額12,000円(年額144,000円)
公務員月額12,000円(年額144,000円)
専業主婦(専業主夫)月額23,000円(年額276,000円)

iDeCoとつみたてNISAの違い

iDeCoとつみたてNISAは、どちらもつみたて投資で初心者向けの資産運用としておすすめされていますが、税効果や商品の特性が異なります。

例えば、iDeCoだと60歳以上になるまでは原則お金を引き出すことはできませんが、つみたてNISAの場合は、入金しているお金をいつでも引き出すことができるため、お金を自由に動かしたいのであればNISAを優先するべきです。

税効果を優先したい方は、iDeCoなら、掛け金も全て所得控除の対象となるので、掛け金を増やすことで毎年の所得税、住民税が安くなります。

老後資金など長期的な目線で資産運用したい場合はiDeCo、資産運用しながらもお金を自由に使えるようにしたい方はNISAが向いています。

一般的には、「NISAは車の資金や住居の購入資金、子供の教育資金のために運用し、iDeCoは老後資金のために運用する」といったような、目的別で利用されていることが多いです。

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項目iDeCoつみたてNISA
対象20歳以上60歳未満20歳以上60歳未満20歳以上
投資期間20年間60歳まで(運用期間は70歳まで)
年間の投資金額14万4,000円〜81万6,000円年間上限40万円
購入できる商品投資信託、定期預金、保険金融庁の基準を満たした投資信託
お金の引き出し原則60歳までしかできないいつでもできる
税効果売却益、分配金が非課税掛け金が全額所得控除の対象、運用益が非課税、受け取り時も税制優遇あり

iDeCOの申し込みから口座開設までの流れ

まずは申し込みする金融機関で申し込み書類を取り寄せます。ホームページにアクセスして必要事項を入力することで申込書を請求できます。

申込書が届いたら、書類に記入し、返送します。会社員・公務員の方は事業主に「事業主の証明書」を記入してもらう必要があります。

返送すると、金融機関から国民年金基金連合会に送付され、資格の審査にかけられます。審査は1〜2ヶ月かかるのでしばらく待ちましょう。

審査が完了すると、国民年金基金連合会から「個人型年金加入確認通知書」と記録関連運営管理期間から「ログイン用のID・パスワード」が届きます。

上記書類が届いたら、ホームページにログインして、初回の配分指定をおこないましょう。

指定しないと、金融機関が掲示する指定運用方法で運用がスタートします。

金融機関によっては全てWEBで申し込みできるところもあり、WEBで申し込みできる場合は書類の請求・返送は必要ありません。本人確認書類などの必要書類は携帯電話で撮影してWEBアップロードを利用して送付します。

金融機関の選び方

申し込みする金融機関を選ぶ際には、以下の内容を確認するようにしましょう。

  • 手数料の安さ
  • 商品ラインアップ
  • サポートの体制

金融機関によって運営管理手数料は異なり、商品ラインアップも違います。

ネット証券は運営管理手数料は無料のところが多いですが、サポートはコールセンターしか無いため相談いにくいというデメリットもあります。

店舗もある銀行であれば、店頭窓口でiDeCoについて相談することができますが、運営管理手数料がかかるところもあります。

どこを重要視するかで最適な金融機関は変わってきますので、申し込み前に確認しておきましょう。

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金融機関運営管理手数料取扱商品数サポート
楽天証券0円32本コールセンター
SBI証券0円34本コールセンター
松井証券0円40本コールセンター
マネックス証券0円27本コールセンター
三菱UFJ銀行事務手数料105円、資産管理手数料66円、運営管理機関手数料260円〜385円33本店頭窓口、コールセンター
三井住友銀行運営機関手数料0円〜260円、その他費用年間792円〜2,052円29本店頭窓口、コールセンター
みずほ銀行事務委託先運営機関手数料66円、国民年金基金連合会105円、運営管理機関手数料0円〜260円31本店頭窓口、コールセンター
りそな銀行0円32本店頭窓口、コールセンター
イオン銀行0円24本銀行窓口、コールセンター

iDeCoの運用方法

口座を開設すると、運用商品を選択して運用が開始されます。

運用商品は大きく、「元本確保型」「元本変動型」に分かれていて、どちらを選ぶかで、リスク・リターンが異なります。

「元本確保型」は、元本割れのリスクを極力抑えた、定期預金や保険商品の2種類がメインで、ローリスク・ローリターンの商品ですが、今は超低金利時代なので、定期預金や保険ではほとんどリターンを得ることができず、手数料が金利を上回って、資産の増加よりも費用が上回ってしまう可能性もあります。

その場合でも所得控除による税効果はあるので、トータルで見れば損はしていないかもしれませんが、資産運用をしているのに資産が増えていないとなると、なんのために運用しているのかわからないので、できればある程度のリスクを許容しながらでも「元本変動型」を選択したほうがよいでしょう。

「元本変動型」の場合は、投資信託を選んで運用します。投資信託なので、元本割れするリスクはありますが、その分リターンを狙うこともできます。

投資信託の運用スタイルによってもリスクとリターンは異なるので、どの商品が自分に合っているかを見極めることが重要です。

初心者はバランス型投資信託がおすすめ

投資信託には、運用会社が国内株式や海外株式などの銘柄を独自に選び、リターンを追求する「アクティブ型」の投資信託と、日経平均やTOPIX(東証株価指数)などの指数と連動するように分散投資された「インデックス型」などの他に、国内の株式や債権や不動産投資信託(REIT)など、様々な資産を組み合わせて分散投資された「バランス型」があります。

「バランス型」の投資信託は、リスクを抑えた運用をしつつ、リターンも期待できる商品なので、大きなリスクは避けたいけど、元本確保型のようにリターンがほとんど期待できないのも嫌だという方はバランス型の投資信託がおすすめです。

積立サイクルを設定する

つみたてというと、毎月一定額を積み立てるイメージがあると思いますが、iDeCoの場合は、積立サイクルを設定することができ、毎月同額である必要がありません。

上限額の範囲内で、2ヶ月に1回、年に1回、ボーナス月のみ増額するなど、柔軟に設定できます。

さらに、積立するごとに105円の手数料が発生するのですが、回数を減らすことで支払う手数料も減るので、実は回数を減らしたほうがお得になります。

ただ、年間の積立回数を減らすことで、毎月積立ることでリスクを分散する「ドル・コスト平均法」が機能しなくなるため、タイミングによっては損してしまう可能性が出てきます。

掛け金の配分を決める

積立金額と、積立サイクルを設定すると、その掛け金内でどの資産運用商品をどれくらいの割合で掛け金を振り分けるかを設定することができます。

リターン重視のアクティブ型の投資信託や安定重視の「インデックス型」など割合を調整してリスクコントロールすることができるのですが、資産運用初心者の方には少し難しいかもしれません。

上記でおすすめしたように、掛け金は全てバランス型の投資信託に振り分けるのが一番無難ですが、独身のうちは少しリスクをとってアクティブ型の投資信託も購入して、結婚して子供ができるとリスクよりも安定重視でインデックス型に配分を変更するという方法もあります。

配分変更・スイッチングとは

上記で紹介したように、iDeCoの運用商品は、運用期間中に商品毎の配分を変えたり、運用している商品を売却して、他の商品に乗り換える「スイッチング」ができます。

運用している商品の一部が大きく値上がりし、今後値段が下がる可能性が高くなった時などに、その商品を売却することで利益を確定させ、その利益で他の商品を購入するといった柔軟な運用も可能です。

特にアクティブ型の投資信託で資産運用を考えている方は、商品自体の評価が大きく上下することがあり、スイッチングをうまく利用することで資産を増やすことができます。

投資信託は、解約する際に「信託財産留保額」という手数料がかかる商品があります。解約を繰り返すと手数料負担が重くなるため、上がらないからといってすぐに解約してスイッチングばかりするというのはやめておいたほうが良いでしょう。

iDeCoの受け取り方法

60歳まで運用した後、受給開始年齢を指定して受給が始まる際、受け取り方法を以下の3つから選ぶことができます。

受け取り方法によって税制の優遇も異なるので、合わせて紹介します。

一時金は一括で全て受け取る方法

60歳になったら、今まで積立てたお金を一括で受け取る「一時金」を選択すると、30年積立てた場合は「退職所得控除」として、1,500万円まで非課税で受け取ることができます。

60歳で退職すると公的年金が支給される65歳まで収入がないと不安という方は、一時金を選択するとよいでしょう。

1点注意が必要なのが、勤めていた企業からの退職金が重なり、控除枠の上限を超えてしまう可能性があるという点です。

退職金の所得控除額の上限は勤続年数によって異なり、国税庁のホームページで計算することができるので、こちらで確認してください。

年金は分割で受け取る方法

一括で受け取るのではなく、「年金」として分割で受け取る方法もあります。

年金として受け取る場合は、1年間で何回に分けて受け取るかを選択することができます。

65歳まで働いて給与収入があり、65歳以降で受け取る場合は「公的年金等控除」が適用され、年間110万円までが非課税に、60歳で退職して60歳から受け取る場合は、60〜64歳までの間は年間60万円までが非課税で受け取ることができます。

併給は一時金と年金を併用して受け取る方法

積立金額が大きい場合は、60歳で一部を一時金として一括で受け取り、残りを分割で年金として受け取ることも可能です。

退職金として一時金を受け取ったものに関しては1,500万円までが「退職所得控除」で非課税となり、そこから受け取る年金も64歳まで年間60万円までが「公的年金等控除」で非課税となります。

一時金を受け取る歳に同時に退職金も受け取り、退職所得控除の上限を超えてしまうと超えた分に対して課税されてしまうため、一時金と年金で分けることで課税を避けることができます。

その他の受け取り方法

上記で紹介した受け取り方法以外にも、加入者が亡くなった場合に受け取れる「死亡一時金」、加入者が高度障害者となった場合に受け取れる「障害者給付金」、失業などで年金保険料を免除されたことで受け取れる「脱退一時金」などの例外的に受け取りができる制度があります。

死亡一時金は加入者の資産として扱われ、一時金として遺族に支払われます。障害者給付金は、加入者が高度障害になってしまった時に給付され、税金は一切かかりません。

脱退一時金は、認められることは稀ですが、年金保険料の免除を受けた際に支給されるケースもあります。

2022年に制度改正があり75歳までiDeCoの運用が可能になった

iDeCoはもともと加入者年齢の上限が60歳までで、受給開始が60歳から70歳の間で選択するという形でしたが、2020年に成立した「年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する法律」によって、

国民年金被保険者であれば加入上限が65歳まで、受給開始年齢も75歳まで選択できるようになりました。

高齢化社会が進む日本で、65歳になっても仕事をしたいという人は多く、60歳以降に加入しても75歳まで運用すれば一定の運用益を得ることができるようになりました。

ただし、60歳以上でiDeCoに加入できるのは、会社員や公務員の方のみで、自営業者や専業主婦(主夫)の方は従来通り60歳までとなっています。

iDeCoに関するQ&A

NISAとiDeCoは併用できる?

つみたてNISAとiDeCoは併用することができます。

どちらも利用することで非課税で資産運用できる枠が増えるのは大きなメリットですが、どちらも非課税枠の上限までつみたてしようと思うとその分負担も大きくなります。

特にiDeCoは運用を始めると拠出したお金を引き出すことはできないため、ずっと使わずに老後のために貯蓄するための資金として積立する必要があります。

いつでも売却して現金化できるNISAと、老後の退職金や年金代わりに積立るiDeCoと、どれくらいの配分で積み立てるのがベストなのか、まずはしっかりと計算するようにしましょう。

専業主婦(主夫)でもiDeCoに入るべき?

専業主婦(主夫)の方でも第3号被保険者としてiDeCoに加入することができ、上限年額276,000円までつみたてすることができます。

配偶者と共に加入することで、老後の資金を非課税枠を利用しながら効率よく積み立てすることができるので、家計に余裕があるのであれば加入することをおすすめします。

子供がいる場合は、教育資金など近い将来の出費を見越して、はじめは掛け金を少額にし、子供が成長してから掛け金を大きくするなどの工夫が必要です。

転職する場合に手続きは必要ですか?

転職した場合は、転職先の年金制度に応じて手続きをする必要があります。

転職先の企業が入っている企業年金制度(DB・DCなど)によっては規約上iDeCoを企業年金に移行する必要があったり、iDeCoを継続できても加入者登録事業所変更届を出す必要があるので、転職先の企業に確認しましょう。

年末調整や確定申告は必要ですか?

iDeCoを個人口座で加入している場合は、年末調整することで税金の還付を受けることができます。

掛け金は「小規模企業共済等掛金控除」という所得控除の対象となり、毎年10月ごろに「小規模企業共済等掛金払込証明書」という書面が届くので、破棄せずに保管しておきましょう。

会社から受け取った年末調整の「小規模企業共済等掛金控除」欄にiDeCoの掛け金額記入して、払込証明書を合わせて渡せばOKです。

自営業者の場合は、確定申告することで税金の還付を受け取ることができるので、必ず確定申告でiDeCoについても申告するようにしましょう。

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